2014年7月16日水曜日

町民の意識的サボタージュの結果

五八年一一月。最高裁判所の判決で、この格差がおおむね三倍以上になれば違憲状態であるとの判断が示された。その後、六〇年一〇月に国勢調査、か行なわれ、て一月に速報値が公表された。それによると最大格差は五し六倍という開きとなった。これを三倍以内にするためには、一〇地区で一名増、一〇地区で一名減。つまり一〇増一〇減を行なうことが必要とされた。

六一年五月になって八増七減と大分二区、愛媛三区、和歌山二区については境界変更という裁定案が示され各党が了承した。増員区は東京周辺と大阪、北海道一区。減員区はすべて過疎地域だ。大分県では一区にある大分市に隣接する挾間町を別府市のある二区に編入して減員を免れたが、突然の編入に町は大騒動となった。地理的にも経済圏としても大分市とのつながりが深い町が、なぜ隣の二区に編入されるのかと抗議集会が相次いだ。

そして六一年七月に行なわれた衆参同日選挙では、この町の投票率は七〇・四%で、県平均八十六%に比べて極めて低調であった。これはゲリマンダー二八二一年にマサチューセッツ州知事デリーが行なった選挙区割りの結果できた選挙区の一つが、サラマンダーに似ていたため、それをもじって新聞記者がゲリマンダーと呼んだ。以来、政略的選挙区域変更のことをゲリマンダーと呼び憤慨した町民の意識的サボタージュの結果ともいえる。

このように過疎と過密の同時進行によって大都市選出国会議員の数が増加し、過疎農漁村選出議員の数、が減少する。これによって地方の声はますます政治に反映されにくくなる。かつて都市部の票は革新、地方の票は保守といわれたが、最近では地方の方に政治不信の声が一段と強まっている。これも農業をはじめ過疎地域の住民の声が政治に反映されないことへの不満の表れであるとみてよい。