2015年1月6日火曜日

数字で見る在日外資系企業の実情

「受験指導に邪魔だ」とハッキリと断られたことも数多くあるとはいっても、二〇〇から三〇〇の公立・私立高校が、定期的に留学生を引き受けている現状は、都会に限らず地方でも日本の鎖国化か徐々に緩んでいるという証でもある。ともかく、近隣の工場で外国人の工員が多数働いているといった状況でもない限り、日本のほとんどの市町村では身近に外国人と接する機会はない。都会でもたまに見かける以外は、特別に話をするわけでもなく、テレビで外国人タレントを見る場合を除いて、彼らが日本にいることすら意識しないというのが現状ではないだろうか。東京、特に繁華街では飲食店やコンビニなどの店員の多くがアジア系外国人となっているが、日本の多くの地域では一般的に外国人と接触することは、まだまだ珍しい体験なのである。

だから一般の人々にとって、こうした存在感が薄い外国人との共生は、身近なテーマとしてなかなか捉えにくい。但し、いくつかの例外がある。その一つが、在日外資系企業であり、そこに働く外国人社員との共生である。外資系企業を「唯一の例外」と断定すると、反論が出てくるだろう。「中学や高校にいる外国語の授業のための外国人アシスタントや、日本研究のために長期滞在している外国人研究者は違うのか」とか、「日本に長年住んでいる在日の外国人(日本国籍を取得していないが、日本を故郷としている人々など)はどうなのか」という質問が起こるのは当然のことだ。しかし、ここではそうした点にまで議論を広げず、日本人と外国人、日本と外国の一つの共生例として、次節からは、在日外資系企業を取り上げたい。

外資系企業と出会う機会は意外に多い。一般の人々にとって、在日外資と関わることは決して多くはない。一九六〇年代にとられた国産品保護、国内企業優遇の政策の下、現在に至るまで、外資系企業あるいは海外企業、外国企業の日本進出は驚くほど進んでいない。後述する政府による調査でも、対象企業は五〇〇〇社しか把握していない。実際にはもっと多いと思われるが、日本にオフィスを構えずに活動している団体を含めても、一万社はないというのが実態であろう。世界第二位のGDP(国内総生産)を誇る国で、外国企業がこれだけしかないというのは、国際化の進む欧州やアジアから見れば異例とも言える。

しかし、実態は実態である。わずかな外資系企業(以下、外国企業や海外企業もこの言葉で代替することが多いことをお断りしておく)の存在を認識するのは、スーパーマーケットで手にした食品が外国製であったり、テレビコマーシャルでよく聞く会社の宣伝を目にする時だったり、あるいは新聞で外資による日本企業の買収や合併のニュースがある時くらいかもしれない。最近では、業績が思わしくないと噂されているシティグループによる日興コーディアル証券の買収があったが゛それがまた売りに出されているのが何とも皮肉だぺ 一般の人が耳にする外資系の話題といえばそうしたM&A(企業買収)のニュースなどが主であろう。

しかし、ビジネスの世界に目を向けると、外資系企業との接点が意外に多いことに気づく。トヨタやパナソニックのような世界企業でなくても、部品や材料を世界各地から買い、最終製品やサービスを日本だけでなく海外で販売している中小企業は数多い。そうした企業に勤める社員の人々は、日常的に外資系企業の名前を聞くだろうし、時には彼らと仕事上で関わりを持つに違いない。そのほとんどが日本人社員との接触であるとしてもだ。またM&Aが日常茶飯事となった今日、「自分の働く会社がある日突然外資系になってしまう」という事態も、珍しい話ではなくなってきた。そうなれば、否が応でも外資系で働くという現実に直面しなければならなくなる(これについては後述する)。