2014年11月3日月曜日

製販同盟

こうしたディスカウントーストアの手法は百貨店や大手スーパーによって積極的に採り入れられつつある。百貨店は従来の返品制を見直し、「買い取り」制にすることで納入業者の負担を軽減して、その分仕入れ単価の引下げを実現しようとしている。また、最近「製販同盟」という言葉がマスコミにたびたび登場している。これは、メーカーと大手小売資本が協力して低価格商品を共同開発するというもので、味の素とダイエーの提携が典型である。

両社は共同で食品を開発、味の素が生産してダイエー系列の小売店、外食店に供給する。メーカーの技術と流通の消費者情報を組み合わせれば、開発コストを大幅に引下げられるし、また大手グループ同士が協力してそれぞれの商品を大量かつ計画的に生産することで、生産・物流両面でのコスト低下が実現できるというものである。その際、共同開発した食品ぱ世界に二九ヵ所ある昧の素の海外工場を生産拠点としてダイエーに供給するとされており、海外生産によるコスト削減も織り込まれている。

こうした包括的な提携関係にいたらずとも、すでに特定品目についてのメーカーとの「格安ブランド」の共同開発は多くのスーパーや百貨店が実施している。ディスカウントーストアの低価格戦略がそのまま他業態の大手小売資本に波及しているわけである。

しかし、こうした戦略が効果を上げるためには、売上げ数量の拡大による仕入れ力の上昇が不可欠となる。ダイエーと忠実屋の合併、イトーヨーカ堂とその子会社セブンーイレブンージャパンとの商品や素材の共有化による大量仕入れの試み、また酒類ディスカウントーストア三社によるドイツでのワイナリー(ぶどう酒醸造所)の共同運営や共同仕入れ会社の設立など、そのことを実証する事例は多い。今後、こうした「規模の利益」を求めて流通業界に一段の再編成の波が訪れるとする予測もうなずける。