2015年11月3日火曜日

「国税」にとってのタブー

検察と組んで、ときには政界の実力者に対しても調査のメスを振るう国税庁。だが、その国税庁も事実上手が出せない「聖域」がある。それは宗教団体、それも社会的に大きな影響力のある巨大宗教団体だ。

宗教法人の場合、寺院、神社の本堂などの賃銭や、僧侶がお経を読んで信者からもらうお布施などは、本来の宗教活動による収入として非課税である。それだけでも他の法人よりも恵まれているといえよう。一方、駐車場や結婚式場などを経営して得られる収益事業には課税されるものの、これも株式会社などの営利法人はもちろん、財団法人や社団法人など他の公益法人よりも税率は軽減されている。

ところが、現実にはこうした収益事業でも申告漏れが多いという。しかし、国税庁はいったい何に遠慮しているのか、巨大宗教法人に対してはなかなか本格的な税務調査は行わないのである。このため、宗教法人に対する税制上の優遇措置の見直しや、宗教法人への課税体制の強化などが話題になる。しかし、いつも掛け声だけに終わっている。

一方、宗教団体と並んでもうひとつの「タブー」ともいえるのが、身内のスキャンダルだ。国税庁は職員数5万7100人の大組織であるが故に、腐敗が生まれるのは当然だ。このため国税庁には内部犯罪を防いだり、場合によっては刑事告発できる国税監察官の制度があり、首席監察官をトップに監察官が目を光らせている。

だが不祥事があっても、まず、監察官室が乗り出す前に身内でかばい合ったり、監察官室で密かに処分したりしていたことが多く、あまり表には出なかった。だが、最近はそれでは済まない悪質なケースが増えてきている。たとえば、97年には特定の資産家を税務調査の対象から外したり、課税資料を破棄したりした見返りに現金を受け取っていた東京国税局管内の三人の調査官が収賄の疑いで逮捕され、翌年、実刑判決を受けた。

98年6月には、大阪国税局査察部に在席したことのある職員が93年当時、マルサの対象になった建設会社社長に情報を漏らしていたことが明るみに出た。このためマルサは不発に終わり、後に料調の力によってやっと摘発できたという。同国税局はこの事実を知りながら、公表することもなく、職員に対する処分も行わなかった。この職員は事件が明るみに出た後の98年7月になって、やっと懲戒免職になったのである。