2015年8月3日月曜日

多種多様な国際問題の解決

戦後の国際社会では、外務省だけが関係する国際問題はむしろきわめて限られてきた。国際関係が複雑化し、多種多様な国際問題が起こるようになって、いまや実質問題の多くは、他の官庁との協力なしには、とても外務省だけでは処理できなくなっている。その結果、従来は国内問題だけに精力を集中してきた他の官庁でも、次第に国際問題を担当する専門家が育ち、また、国際問題を取り扱う知識・技術も蓄積されるようになってきている。

そうなると、外務省を通してしか外国と接触・折衝できないという状況が、むしろ障害として受け止められるようになってくるのである。特に、頻繁に外国と接触する官庁では、直接のルート、チャンネルを作り上げるところも出てくる。こうして、国際金融・通貨問題では大蔵省が、また、国際通商問題では通産省が、外務省の権限に挑戦することとなった。

特に大蔵省の場合、戦後のごく早い時期から国際通貨基金(IMF)に関する仕事を集中し、外務省が口を挟む余地を排除してきた。国際通貨・金融に関しては、大蔵省は外務省となんら相談することなく、独自の判断で行動する。

新聞報道でも、国際通商問題をめぐる外務省と通産省との対立・抗争が、時におもしろおかしく報じられることがある。これぱ、国際通貨問題での大蔵省の実績を横目でにらんだ通産省の行動によるものである。しかし、今日では経済問題は国際関係の非常に重要な部分を占める。従って、外務省としても簡単に引き下がるわけにぱいかない。

また、仮に通産省との争いに負けるようなことがあれば、農水省、郵政省、運輸省、科学技術庁、防衛庁など、外務省の権限に挑戦しようとする官庁が後に控えているのだ。よくいわれることは、もし各中央官庁が外交をやるようになったら、外務省に残るのはプロトコール(儀礼)、領事、条約ぐらいなもの、ということだ。これでは、老舗の中央官庁としては到底耐えられない。