2012年9月6日木曜日

人がなにかに頼りたくなるとき

石川さんは、次のような問いかけをされています。「心理療法の仕事がここ数年で日陰の存在から表に立だされる存在へ変化したという実感があります。やっと理解されるようになったという思いと同時に、とまどいもあります。私たちはこれからどのようなことに気をつけていけばいいのでしょうか」

もともと心理療法には、陰の仕事みたいな要素があります。縁の下の力もち的な存在であるべきもので、正しく理解されるのは歓迎すべきことですが、かといって、それがあまり表に出てきて威張りだすと、ろくなことはありません。

「私にはわかります」とか、「私には治せます」、「私がしてあげます」などと慢心し、傲慢になっていたら、いっぺんにだめになると思います。そういうことに対する自戒の念をいつもはっきりともっている必要があります。

私たちはそれなりに専門の勉強をし、訓練も受けていますから、素人の人がびっくりするくらいのことは言えます。しかし、そういうことを得意になってしゃべり、それで喜んでいたのではどうしようもありません。

カウンセラーやセラピストをよそおっだ詐欺師も困りものですが、ペテン師まがいの心理学者はもっと有害です。

社会が不安になると、みんな、どうしてもなにかに頼りたくなります。自分で考え苦しんでいるより、なにかに頼るほうが楽だからです。そこに落とし穴があるわけで、詐欺まがいのことは、やろうと思えばいくらでもできます。

だいたい人間というのは、ほとんどの人が催眠にかかりますから、類似催眠状態にすればいろいろな劇的なこともある程度可能です。

学校へ行かなかった子が翌日から行くようになったとか、夜尿がピタリととまったとか。軽い場合は、それでもいいかもしれませんが、重い場合は後でぶり返しが来て、非常にむずかしくなります。