2015年2月3日火曜日

アジア太平洋戦略と「ビンの蓋」論

東西冷戦が米ソ首脳によるマルク島会談(八九年)で終了してから、早くも十余年。冷戦時代のような核兵器の威嚇による全地球規模の全面戦争の危険性は去ったが、それに代わって湾岸戦争に代表される大規模な地域紛争や国境、民族、資源、宗教問題などに起因する局地紛争が多発する危険性が、増大している。

規模の大小にかかわらず、あらゆる紛争はもちろん平和的な話し合いによる解決がいちばん望ましいが、湾岸戦争のように多国籍軍の力を借りて、侵略を粉砕せねばならない例も皆無とはいえない。

米国の安全保障戦略の基本は、冷戦に一人勝ちした唯一の超大国として、不安定で予測が難しい今後の世界で、いかにして自国の軍事的優位性を維持し、その権益を確保し、自由貿易を発展させ、国益を仲長させていくかにある。

とりわけアジア太平洋地域は、米軍人とその家族などを含めて約四十万人の米国人が暮らし、年間五千億ドルを超える米国の貿易と、米国市民四百万人の雇用を支え、総額千五百億ドル以上の直接投資が行われているだけではない。

国連常任安保理事国で核を持つ中口二大国が位置して、米国にとっては文字通り死活的な利害関係を持つ重要な地域である。だからこそ米国は、冷戦時にこの地域に十三万人規模の兵力を展開していたのだ。

冷戦の終結にともなって、兵力を九万人に削減する計画が立てられた。しかし、「北朝鮮の脅威」に対応して、東アジアの兵力は最終的に十万人規模を維持する決定が行われた。