2012年8月23日木曜日

テポドン・ショック

北朝鮮は、一九九八年八月三一日に長距離ミサイル「テポドン」の発射を行った。テポドンは北朝鮮の日本海岸にある発射基地「舞水端」から発射された。日本を越え、およそ一五〇〇キロを飛び太平洋に着水した。テポドン発射に、日本は驚愕した。

日本政府は、直ちに、①日朝正常化交渉の再開見合わせ②食糧支援の見合わせ③チャーター飛行使の運航当面停止④朝鮮半島千不ルギー開発機構(KEDO)への資金供与協力見合わせの制裁措置を取った。これに対し、北朝鮮は九月四日に人工衛星「光明星1号」を打ち上げ軌道に乗ったと発表した。

日本では、北朝鮮の発表に対し「人工衛星」か「ミサイル」か、といった論議が行われた。しかし、この論議はあまり意味のないものであった。実態は、ミサイル用のロケットに人工衛星を載せて打ち上げたものである。ロケットは、どちらにでも使えるものであり、弾頭に人工衛星を搭載すれば人工衛星になり、爆弾を搭載すればミサイルとして使用できるという違いしかないのである。

アメリカやロシア、中国はミサイル用のロケットで人工衛星を打ち上げようとしたが、失敗したとの見解を取った。日本が大騒ぎしたのとは対照的に、韓国やアメリカは冷めた対応を示した。テポドンーミサイルは、今の段階ではたいした脅威にはならない、というのがアメリカの判断であった。ただ、いずれアメリカに届くミサイルを開発する可能性への懸念は強調した。

実は、テポドン・ミサイルは冷静に考えれば日本にとっても決して脅威になるミサイルではない。射程が一五〇〇キロ以上であれば、日本の上空を飛び越え太平洋に着水するだけで、日本には落ちないからである。