2014年10月2日木曜日

自然環境を破壊する

発展途上諸国には、飢餓と貧困に苦しむ人々が数多くいます。地球温暖化が進むと、環境難民が飛躍的にふえることについては、前にくわしくお話しました。その大部分は農村に往んで、農業に従事している人々です。どうすれば農業をさかんにして、農村を活件化することができるだろう。これから二十一世紀にかけて、おそらくもっとも重要な政策的課題となるのではないかと思います。

この課題に対して、制度仁義の考え方にたつとき、どのようなり答が似られるのでしょうか。そのために、日本の農業がなぜこのように衰退してしまったのかを考えてみましょう。農業は、イネ、コムギなどの農作物をつくったり、鳥、豚などの家令を飼って、食川にあてる営みです。そのほかにもワタの綿花から本絹をつくったり、蚕の剛から絹をつくって衣服の原料とするのも農業です。森林から本材を伐り出す林業、海や川から魚介類をとる漁業も、ひろい意味での農業に今めて考えることもあります。しかし、農業の中心はやはり、川畑を耕して、植物を栽培して、食料にあてる営みといってよいと思います。

いずれにしても、農業は、生物を使って、その生命現象をうまく利川して、人類の生存、生活に必要なものをつくりだしているわけです。植物の場合、大陽エネルギーを使って、人気中の二酸化炭素と水を酸素と炭水化物に変えて、すべての生物が生きてゆくために必要な有機物をつくりだしています。この点、農業とは決定的に異なっています。生産に程で化石燃料の大量の消費を必要としますが、農業部門では、化石燃料を使わないでも、生産活動をおこなうことができます。

植物は、葉から、ニ酸化炭素を吸収し、根から地中の水を吸い上げて、葉緑素を使って光合成をおこない、酸素と有機物(炭水化物)をつくりだします。呼吸は、光合成によってつくりだされた炭水化物が酸素と結合するものですが、そのときに出されるエネルギーを使って、植物は、水や地中の有機物を吸収し、蛋白質、脂肪などをつくって成長しつづけることができます。食動物は、植物を食べて生きています。その草食動物を肉食動物が食べるという食物連鎖がつくられ、人間がその頂点にたっているわけです。

農の営みはもともと、太陽エネルギーと二酸化炭素という無限に存在する資源を使って、人類が生きてゆくために必要な食料をつくってきたわけです。工業は、化石燃料という限られた量しか存在しない資源を大量に使って、自然環境を破壊するだけでなく、大気中にニ酸化炭素を放出し、地球温暖化をひきおこしているのです。しかし、農の営みが、農業として、それに従事する人々の生計を支えてゆくためには、農機具、農薬などという工業製品を使い、電力、ガソリンなどを大量に使っています。

自然環境を破壊することなくヽまた二酸化炭素の放出量をできるだけおさえて農業をおこない、しかも農民がゆたかな生活をおくることがはたして可能でしょうか。この問題は、いま日本が直面しているいちばん重要な課題の一つではないでしょうか。